睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度として無呼吸低呼吸指数(AHI)が指標となるが、小児は胸郭が柔らかく代償するためAHIでは予測できないことがしばしばである。そこで、脳波を含めた終夜睡眠ポリグラフ(PSG)とともにヒプノPTTを用いて呼吸努力の有無と睡眠中の脳波上覚醒について手術前後の比較を行った。ヒプノPTTは動脈血が左心室から送り出される心拍変動が指先の脈に到達するまでにかかる脈波伝達時間で換気努力の評価と自律神経刺激による覚醒反応の検出が可能な機会であり、小児の検査に適すると考えられた。24名では閉塞型、中枢型無呼吸の判別が可能であった。PSGとの比較では覚醒反応検出の鋭敏さは見られなかったが、換気努力の評価には有用であった。 また、小児の睡眠障害では行動異常(多動や攻撃性)、学習障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)との関連が指摘されている。アデノイド・扁桃摘出術による手術治療を行った小児に腕時計型の行動評価が可能であるアクティウオッチを5名に施行したが、術後観察期間が短かったためか明らかな変化は見られなかった。小児32名の保護者に術前後でOSA-18で行動反応、生活様式の変化について聞いたところ、28名の保護者が気分のむらや攻撃性異常に活発な行動が改善していると回答していた。また、手術によって子どもの健康の心配や低酸素になっているのではないか、という保護者の心配やストレスが軽減してしいることがわかった。PSG、PTTによる睡眠パラメーターの改善、一部には2年間の追跡によって顎顔面形態の改善もみられ、保護者による改善度も高かったが、客観的な行動異常の評価は難しいことがわかり、今後は評価の方法の検討が必要と考えられた。
|