研究概要 |
われわれは後方視的に先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染の関与を証明することができる保存臍帯検査を行って、聴覚障害児67例のうち10例(15.4%)においてCMV-DNA陽性、16例(23.9%)に聴覚障害において最も頻度の高いGJB2遺伝子異常を確認した。遺伝子異常を示した患児とCMV遺伝子が確認された患児との間で重複はなかった。乳幼児における聴覚障害の原因としてGJB2遺伝子異常が最も頻度が高く、それについでCMVによるものの頻度が高い結果となり、本邦においても聴覚障害の原因として先天性CMV感染の頻度が高いことがわかった。CMV-DNA陽性患者とGJB2陽性患者について出生時体重を比較するとCMV-DNA陽性群で低い傾向があった。側頭骨CT,MRIの検査においては両者に差はなく、形態学的な違いは見られなかった。GJB2遺伝子異常の患児5名、CMV-DNA陽性患児5名に対して人工内耳埋込術を施行した。人工内耳手術時の所見では蝸牛開窓時のリンパ液の流出状況、電極の挿入状況に差を認めなかった。人工内耳は全症例にNucleus24を使用。コード化法はACEを用いた。人工内耳の電極は10症例において有効電極全て挿入され、22チャンネル有効に機能している。人工内耳の装用効果は32.5dBから33.7dBと良好であり、IT-MAIS,MUSSのスコアは人工内耳装用前後において同等の改善が確認された。CMV-DNA陽性患者の1例に発達の遅れが高度な症例があり、今後の人工内耳装用効果がどの程度まで上がるのか注目している。遺伝子難聴とCMVを同時期に検査する本研究により、本邦における乳幼児聴覚障害の原因が明らかになり、人工内耳を含めた早期治療、療育に対する方針が明らかになるもとと考えられる。
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