研究課題
本年度も、昨年に引き続き頭頸部癌患者において腫瘍切除と欠損に対する再建を施行された後の嚥下機能の評価を検討した。今年度は特に中咽頭がん患者を対象として嚥下機能評価を行った。嚥下圧の測定はステーション法により中咽頭嚥下圧、下咽頭嚥下圧、食道入口部において弛緩時間の測定を行った。同時にVideofluorography(VF)を施行し、透視によりプローブの位置が正しいことを確認し、かつ従来のVFによる嚥下機能評価を加えた。機能評価のポイントは昨年に引き続き口腔期:1舌運動、2食塊の移送、3食塊の保持、咽頭期:1軟口蓋の挙上、2舌根運動、3咽頭の収縮(同時に圧測定)、4喉頭挙上、5poolingの有無、6声門閉鎖、7VF所見としての食道入口部の開大、8食道入口部の弛緩(圧測定による)、9誤嚥の有無である。また、術後の摂食状況につきアンケート調査を行った。その結果、中咽頭嚥下圧は平均28mmHgと著明低下していた。下咽頭圧は平均95mmHgであり正常コントロールと比較し遜色のない結果であった。中咽頭嚥下圧はVFで観察された舌根機能および咽頭収縮能とよく相関し、VFにおける舌根運動低下および咽頭収縮能不良症例では中咽頭嚥下圧は低下する。これにより、VF所見で中咽頭嚥下圧は予測可能と考えられた。下咽頭嚥下圧は下咽頭クリアランス能を反映していると考えられるが、今回の検討ではVF所見との相関は得られず、下咽頭機能の評価にはVFのみでは不十分であり、下咽頭嚥下圧が保たれている症例で経口摂取良好となる症例があることより、正しい評価には嚥下圧測定が必要であると考えられる。また、VF上みられるUES開大とUESの弛緩は相関せず、UES機能の評価には圧測定が必要である。
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Dysphasia in rare conditions. An Encyclopedia(Plural Pub. San Diego, USA)
ページ: 385-392