研究課題
本研究の目的は、これまで主として技術的な問題から実施されていなかった日本人の原因不明の感音難聴患者におけるミトコンドリアDNA変異の関与の全体像を、極めて高感度かつ効率的な遺伝子変異スクリーニング技術(DHPLC法)を導入することで解明することである。この結果に基づいて、日本人難聴者の診断におけるミトコンドリア遺伝子変異解析の位置づけを確立する。日本人の原因不明の両側性感音難聴患者から難聴遺伝子解析のために連結可能匿名化の上で現在までに提供を受けたミトコンドリアDNAのA1555G変異とA3243G変異およびGJB2遺伝子変異を除外した先天性難聴100家系および後天性難聴120家系の検体において、これまでに難聴遺伝子としての報告があるミトコンドリア遺伝子7種類(12SrRNA、tRNA Leu(UUR)、tRNA Ser(UCN)、tRNA Lys、tRNA His、tRNA Ser(AGY)、tRNA Glu)の変異をスクリーニングした。また、正常コントロールとして日本人健聴者200人から提供を受けたDNAで検討した。この結果、正常コントロールでは同定されずに難聴者のみで同定される遺伝子変異が発見され、難聴の原因となる新たな遺伝子変異と考えられた。その内訳は、12SrRNA遺伝子ホモプラスミー変異1種類7例およびtRNASer(UCN)遺伝子ホモプラスミー変異1種類3例が確定、12SrRNA遺伝子ヘテロプラスミー変異3種類各1例が強く疑われて、現在確定に向けて検討中という現況である。この成果は、ミトコンドリアDNA変異の難聴者における頻度を明らかにするものであり、将来の高感度かつ効率的な難聴遺伝子診断に役立つとともに、感音難聴の聴覚管理と聴覚リハビリテーション、遺伝カウンセリングなどに応用可能と考える。今後は今回同定された遺伝子変異を標的とするより効率の高い遺伝子解析法を開発し、臨床診断への活用を促進する。
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