平成22年度研究計画に則り研究を進め、以下の結果を得た。 1遺伝子サンプルの収集と臨床データの解析:ベーチェット病、サルコイドーシス、Vogt-小柳-原田病(原田病)の遺伝子サンプルを海外を含め収集した。サルコイドーシス患者血清中で高値となる新たなマーカーを同定した(英文原著論文出版)。また、今回初めてロシア・モスクワからのベーチェット病患者の臨床データを得た。遺伝子サンプルの一部を既に入手した。残りは輸送問題と震災のためにたびたび延期されているが、近い将来入手できると考えている。 2原田病の遺伝子多型解析:原田病はメラノサイトに対する自己免疫疾患であり、眼のぶどう膜炎、髄膜炎、皮膚白斑、白髪等を引き起こす。原田病患者と健常者を対象に、尋常性白斑や自己免疫疾患で遺伝子多型が報告されているNLRP1遺伝子多型を解析した。しかし原田病では既知の6カ所のSNPsのいずれも健常者と有意差がなかった。皮膚の臨床的表現形が極めて類似している尋常性白斑と原田病であるが、その病態メカニズムは異なることが推測された(2011年1月英文原著論文出版)。 3ベーチェット病の遺伝子多型解近:ベーチェット病のゲノムワイド関連解析により新たな関連遺伝子が同定された(Nat Genet出版)。ベーチェット病の眼症状は95%が両眼性・再発性のぶどう膜炎である。一方、原田病は多くが一度の眼炎症である。これまでの動物実験でぶどう膜炎の再発との関連が推測されたαメラノサイト刺激ホルモン受容体の一つ、MC5rの遺伝子多型をベーチェット病と原田病とで比較検討した。全体では有意差は見られなかったが、世界的にベーチェット病と普遍的に関連すると考えられているHLA-B51または-A26保有者を対象とすると、両疾患間でSNPの一つに有意差が見られた(P<0.05)。
|