研究概要 |
今年度の研究実績として,20人の正常ボランティアを対象として,HRT IIロストック角膜モジュールを用いて,角膜中央から中間周辺部の生体観察を広範囲に行い,正常K-structureの2次元構造の解析を試みた。その結果,全例において角膜ボウマン層と角膜実質との境界面に網目状の広がりを持つ,線維状の構造物(直径5-15μm)を認めた。この構造物(K-structure)は角膜中央部と同様に,角膜周辺部においても観察された。さらに,この構造物は若年者でより明瞭に観察され,年齢とともに不明瞭になる傾向が認められた。コンピュータプログラム(Image-Pro Express;Media Cybernetics,Silver Spring,MD,USA)を用いてK-structureに囲まれる多角形の面積を測定し,平均面積を算出した。次に,5人の正常ボランティアを対象として,フルオレセイン染色液を角膜に滴下して上眼瞼上からマッサージを行い,蜂の巣状の模様(anterior corneal mosaic,ACM)を角膜上に出現させた。その状態を眼科用フォトスリットを用いて撮影を行い,同一被験者のK-structureの2次元広範囲マッピングの電子トレース像をACMの写真とスーパーインポーズして合成させ,ACMとK-structureの関連性について検討した。その結果,全例でACMとK-strctureの構造が一致した。このことから,K-structureはACMの解剖学的な発生原因であることが,強く示唆された。現在,本実験データを臨床系眼科海外雑誌に投稿中である。
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