我々は、これまでに健常人を対象として、ラタノプロストの眼圧下降作用と、その作用点であるプロスタグランジンFPレセプター遺伝子のプロモーターと第1イントロン領域の多型(rs3753380、rs3766355)に、関連性があることを見出した。そこで、緑内障患者または高眼圧症におけるラタノプロストによる眼圧下降作用が、健常人と同様にFPレセプター遺伝子の多型と関連するかどうかを検討した。 rs3753380、rs3766355、rs3766354、rs3766353ついては、すでに111人についてタイピングが終了しているため、今年度はFPレセプター遺伝子のこの他の多型(rsl073611、rsl073610、rsl2093097、A-1294C、A938G)について遺伝子型のタイピングを行った。全対象について、ベースライン2回、ラタノプロスト点眼後2回の眼圧測定値から、眼圧下降率を計算した。このうち、ベースラインからラタノプロスト点眼2回目までの眼圧測定期間が9ヶ月以上の対象や、正常眼圧緑内障、狭義開放隅角緑内障、高眼圧症以外の疾患の対象を除き、105人について、遺伝子多型と眼圧下降率に関し解析を行った。しかしながら、眼圧下降率と有意な関連を示す遺伝子多型は見出せなかった。ただし、被験者を眼圧下降率に応じて、ローレスポンダー、メディアムレスポンダー、ハイレスポンダーに分類し、Fisherの正確確率検定を行ったところ、rs3766354において傾向差が認められた。また、今回の眼圧下降率は健常人に比べ低かったため、ベースライン眼圧が18mmHg以上の対象33人について解析したところ、A-1294Cにおいて、遺伝子型と眼圧下降率の間に関連が見られた。ラタノプロストが片眼のみ投与されている対象62人に関しては、同時刻に測定した無治療の反対眼の眼圧値を対照とした眼圧下降率を算出し解析したが、眼圧下降率と有意な関連を示す遺伝子多型は存在しなかった。
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