研究概要 |
眼圧は,緑内障の最も大きなリスクファクターとされており,日内変動をすることが知られているが,その変動のメカニズムはまだ不明な点が多い。我々は,これまでに,角膜から前房にガラスキャピラリーを刺して眼圧を測定するマイクロニードル法を用いて,時計遺伝子の一つであるクリプトクロム1,2遺伝子のダブルノックアウトマウスの眼圧を測定し,正常マウスに見られる二相性の眼圧日内変動が見られなくなっていることを発見した。このことは,マウスの眼圧の日内変動が時計遺伝子による中枢時計の支配を受けていることを示しているが,どのような機構で眼圧を変化させているかは明らかではない。ウサギにおいて,交感神経が眼圧の変化に関連していること,緑内障治療薬であるβ遮断薬が房水産生の抑制に関与していることなどから,βアドレナリン受容体遺伝子に着目し,この遺伝子のノックアウトにより眼圧の日内変動が変化するかどうかを,検討している。 アドレナリンβ1,β2受容体遺伝子ダブルノックアウトマウスを,米国のJackson Laboratoryより購入した。このマウスは繁殖力には問題はなかったが,育児をうまく行えない親がおり,約半数のケージで,生後1〜3日で子マウスが死亡した。シェファードシャックと呼ばれる巣箱をケージに入れることにより,多少の改善を見た。その結果,眼圧測定に必要なマウス40匹を離乳させることに成功し,まもなく眼圧測定に可能な週齢(8週齢以降)に達する。各々のマウスの尾部より遺伝子DNAを抽出し,アドレナリンβ1受容体遺伝子はアミノ酸コード領域の大部分の欠損,β2受容体遺伝子はアミノ酸コード領域への他の遺伝子の挿入により,機能する受容体ができないことをPCRにより確認した。現在,正常マウスの眼圧をマイクロニードル法により測定している。
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