研究概要 |
眼圧は、緑内障の最も大きなリスクファクターとされており、日内変動をすることが知られている。ウサギにおいて交感神経が眼圧の日内変動に関連していること、緑内障治療薬であるβ遮断薬が房水産生の抑制に関与していることなどから、βアドレナリン受容体遺伝子に着目し、この遺伝子のノックアウトにより眼圧の日内変動が消失するかどうかを検討した。 β1、β2アドレナリン受容体遺伝子ダブルノックアウトマウスを12時間毎の明暗条件化に2週間以上順応させ、マイクロニードル法を用いて、6時、9時、12時、15時、18時、21時、24時の眼圧を測定した。ノックアウトマウスで最も眼圧が低かったのは、15時で13.5±1.5 mmHg(平均±標準偏差)、最も高かったのは24時で18.7±1.4 mmHgであり、明条件下で低く、暗条件下で高い有意な眼圧変動が見られた(Friedman rank sum test, P<0.001)。24時間恒暗条件に順応下で15時と24時の眼圧を測定すると、15時では13.0±1.3 mmHg、24時では18.1±1.4 mmHgであり、24時の眼圧は有意に高かった(Wilcoxon signed rank test, P<0.001)。15時と24時の眼圧は、12時間毎の明暗条件下と24時間恒暗条件下の間で有意差を認めなかった(Mann-Whitney U-test)。 ノックアウトマウスとC57BL/6Jマウスの前眼部の組織を光学顕微鏡と電子顕微鏡で観察した。遺伝子改変によって隅角、毛様体の構造に大きな変化は見られなかった。 β1、β2アドレナリン受容体遺伝子ダブルノックアウトマウスにおいて眼圧日内変動が消失していなかったことから、眼圧日内変動はβ1、β2アドレナリン受容体を介さずに生じているか、あるいは、ノックアウトにより交感神経の他の受容体が代償している可能性がある。
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