研究概要 |
近年、stromal cell-derived factor-1(SDF-1)が血管新生に重要な役割を果たしていることが明らかになったが、SDF-1とそのレセプターであるCXCR4受容体が新生血管の進展にどのように寄与しているかを調べた。7-8週令のC57BL6/Jマウスの網膜を96時間培養した。VEGFを加えることでSDF-1のmRNAの発現が増加した。SDF-1/CXCR4をそれぞれの抗体で阻害するとVEGFによる血管新生が抑制された。Time-lapseイメージングを行うことで、SDF-1/CXCR4によって新生血管の伸展や、tip cellから進展するフィロポディアの動きが制御されていることが判明した。さらにSDF-1/CXCR4を阻害するとマイクログリアの動きも抑制されることがこの系で明らかになった。一方で、網膜血管発生モデルを用いて検討を行った。生後2日目のC57BL6/Jマウスに抗SDF-1抗体または抗CXCR4抗体、またはCXCR4阻害剤であるAMD3100を投与し、生後4日目で網膜を採取、固定して評価を行った。血管の伸展はコントロールに比べて有意に遅れていた。これらの阻害剤はtip cellからのファロポディアの進展を抑制し、tip cellに発現しているKDR/Flk-1, UNC5B, PDGFBのmRNAの発現を抑制していた。また網膜内のマイクログリアの数はコントロールに比べて減少していた。以上のことからSDF-1/CXCR4は網膜における血管新生をtip cellやマイクログリアを通じて制御していることが明らかになった。
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