最終年度は、主としてラット網膜と培養細胞において、細胞死を促進するpro-apoptotic geneであるHrkの詳細な発現パターンと細胞死誘導機能との関連性が明らかになった。Hrkノックアウトマウスの組織標本を用いて、まず複数の市販の抗Hrk抗体の品質を評価したところ、特異性が高く使用に耐えうる製品が見出されたので、免疫組織化学染色を行った。その結果、網膜神経節細胞では、その局在する蛋白質の絶対量は低かった。このことは、Hrkを発現しない神経系培養細胞にHrk-cDNAをtransfectionして免疫染色した結果が、高い染色性を示すことからも支持された。この培養細胞の実験では、抗体の染色性が高く、発現量の多い細胞ほど細胞死に至る傾向が見られたので、Hrkの発現上昇により網膜神経節細胞が細胞死に至るという我々の仮説を裏付ける結果となった。 我々が単離した網膜神経節細胞特異的モノクローン抗体C38の認識抗原分子C38の網膜における詳細な組織分布と、網膜神経細胞の成熟に関与するという機能が明らかになった。視神経切断後に、その発現量が減少することが明らかになっているので、細胞死との関連性について引き続き解析を進めている。 一方、組織切片上の遺伝子産物の絶対量の定量化法の実用化に向けた改良を進めた。これまでに、陰性対照用に行う、組織切片のRNase処理について、標本中の標的RNAを完全に消化分解できる条件を決定することが出来た。その条件は、臓器によって異なることが明らかになり、定量化の条件設定において、組織別、細胞別に、詳細な条件検討が必要であり、注意を要することが示唆された。
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