研究概要 |
1.上斜筋麻痺におけるBielcschowsky頭部傾斜試験と上斜筋筋サイズの解析.上斜筋麻痺におけるBielcschowsky頭部傾斜現象が上斜筋の最大筋腹断面積サイズで説明可能か否かを検討するために,17名の上斜筋麻痺と14名の正常被験者を対象にMRIを用いて撮像した正面ににおける軸位冠状断,矢状断画像の上斜筋と下斜筋を画像解析して算出した最大筋腹断面積サイズ(mm^2)と患側,健側頭部傾斜時の患眼の上下偏位(度)を比較した.その結果,正常被験者の上斜筋の平均(SD)の最大断面積サイズは,18.1(3.2)mm^2,上斜筋麻痺患者の患眼は14.2(6.8)mm^2,健眼は19.2(4.5)mm^2であった.正常被験者の下斜筋の平均(SD)の最大断面積サイズは,18.3(3.5)mm^2、上斜筋麻痺患者の患眼は21.2(7.9)mm^2,健眼は22.0(6.7)mm^2であった.上斜筋萎縮例のBielcschowsky頭部傾斜現象は,20.1(5.5)゜,非萎縮例のそれは10.3(5.6)゜であり,Bielcschowsky頭部傾斜現象と上斜筋の最大筋腹断面積サイズの間には相関がなかった.以上から上斜筋の最大筋腹断面積サイズでは,Bielshowsky頭部傾斜現象を説明できず,したがってBielcschowsky頭部傾斜現象は上斜筋麻痺に特有の現象ではないと結論した.2先天性眼球運動神経障害における外眼筋形態の解析.先天上斜筋麻痺を含む先天性眼球運動神経障害者の外眼筋の形態を解析することを目的に,6名の正常被験者を含む4名の動眼神経麻痺,26名の上斜筋麻痺,5名のDuane症候群を対象に1.5,3TのMRIで軸位冠状断,矢状断画像をもとに水平直筋の上下2分離所見を観察した.その結果,35名中,4名(11%)に水平直筋の2分離所見を認めた.内訳は上斜筋麻痺1例(4%),動眼神経麻痺1例(25%),Duane症候群2例(40%)であった.正常被験者,後天性眼球運動神経麻痺では2分離所見を認めなかった.先天性眼球運動神経障害にのみ,水平直筋の上下2分離所見がみられたことから,外眼筋の発生は上下別個の間葉系組織塊が融合して形成されるとするSevelの発生仮説を支持する結果を得た.
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