創傷治癒は生体防御において最も重要な過程であり、なかでも上皮のすみやかな修復は瘢痕を残さない美しい治癒を達成するために不可欠である。すみやかな上皮の修復には実質細胞とのクロストークが重要であることは最近の研究からも明らかとされつつあり、実質細胞の果たす役割を解明することが治療の質を向上させることにつながると考えられる。以前より、Lumicanが角膜上皮の創傷治癒に重要な役割をはたしていることは報告されていたが、上皮のepidermal mesenchymal transitionによるものか、実質が発現するLumican による働きが重要であるかは不明であった。そこで我々は骨髄移植の方法を用いることにより、上皮と実質のキメラを作成し、それぞれの役割を明らかとするための研究を行った。その結果、Lumican wild type(Lum+/+)の骨髄移植をLumican knockout(Lum-/-)に行うと、創傷治癒が促進されることがわかった。またLum+/+のC57BL/6-Tg(CAG-GFP)の好中球(PMN : polymorphonuclear neutrophil leukocyte)をLum-/-に移植した後、角膜実質にlysosomeに捕食されるとred fluorescein を発現するStaphylococcus aureusを注入した感染実験では、移植されたPMNが細菌を貪食するのがLum+/-の角膜実質比べて少ないことが確認された。角膜実質に存在するLumicanはPMNの浸潤を招き、角膜の透明治癒を妨げる結果となった。
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