発生初期鶏胚の網膜神経層において、Gタンパク共役型ATP受容体の活性化による細胞内カルシウムストアからのカルシウムイオンの放出(カルシウム動員)が、細胞増殖期の神経上皮細胞(特に細胞周期上のS期細胞)で顕著に生じ、分化した細胞(網膜神経節細胞)では痕跡的であること、イオノトロピック型受容体の活性化による細胞外からのカルシウムイオンの流入は、網膜神経細胞の分化が進行した後に認められることを既に報告している。平成19年度はまず、ATP受容体の活性化による網膜神経上皮細胞の細胞増殖・細胞分化への影響の評価方法を確立した。細胞増殖効果については、器官培養後の網膜神経層を単離して血球計算板で全細胞数をカウントする、或いは、トリチウムチミジンを培養液中に添加してDNA合成中の細胞に取り込ませた後、シンチレーションカウンターでトリチウムをカウントすることで評価した。これらの方法で、培養液中にATPを添加してその影響を検討したところ、DNA合成の促進が認められた。また分化した各種網膜細胞の数・割合に対する効果については、網膜神経層を単離し、網膜神経節細胞・アマクリン細胞・双極細胞・杆体視細胞を認識する抗体による免疫染色を行い、陽性細胞をカウントすることで評価した(蛍光ラベルを用いるこれらの解析に必要な落射蛍光顕微鏡装置一式を設備備品として購入した)。引き続き現在は、細胞増殖に関与するATP受容体のサブタイプの同定を試みており、増殖制御におけるGタンパク共役型ATP受容体とイオノトロピック型ATP受容体の間の機能的連関を明らかにしていく予定である。
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