補助シグナル分子は、T細胞の活性化と機能に重要な役割を担っており、これらの分子機能を人為的にコントロールすることによって、難治性ぶどう膜網膜炎の発症機序の解明や発症制御、治療へとつながるものと考えている。本研究は、補助シグナル分子に特異的に結合して機能阻害するモノクローナル抗体(mAb)を作製し、実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)マウスに投与して治癒効果を検討することを目的としている。 T細胞の機能制御に働くと考えられている抑制性の補助シグナル分子PD-1に対するモノクローナル抗体を作製し、 EAUマウスに投与した結果、コントロール抗体投与群と比較して早期発症および症状の増悪が認められた。抗原特異的なCD4T細胞の増殖促進、 IFN-γおよびIL-17の産生増強が認められたことから、 PD-1は、通常EAU発症に抑制的に機能していることが明らかとなった。PD-1のリガンドは、2種類、 B7-H1(PD-L1)とB7-DC(PD-L2)が知られており、それぞれの分子に対するモノクローナル抗体をEAUマウスに投与した結果、 anti-B7-H1mAb投与群よりもanti-B7-DC mAb投与群において明らかな症状の増悪が認められた。 EAU発症に関わるTh1細胞は、 Th2細胞に比べPD-1の発現量が高く、可溶型のB7-H1-IgとB7-DC-Igで結合能を検討した結果、 B7-H1-Igの弱い結合性に対して、 B7-DC-Igは強い結合性を示した。このことからEAU発症に直接関与するTh1細胞は、 PD-1を高発現し、通常、 B7-H1よりもB7-DCと強固に結合することにより発症抑制に働いていると考えられた。従って、 anti-B7-H1mAbよりもanti-B7-DC mAb投与の方がより症状を悪化させたと考えられる。
|