研究概要 |
網膜ジストロフィの大部分は、遺伝性の疾患で多種の疾患が含まれる。病初期では、網膜視細胞や網膜色素上皮の機能障害に伴い、夜盲、黄斑変性、色覚異常、視力・視野障害が出現する。網膜ジストロフィのなかで網膜色素類縁疾患のコロイデレミア、小口病、クリスタリン網膜症、家族性ドルーゼンに対し、REP1,GRK1,SAG,CYP4V2,EFEMP1遺伝子解析を行った。対象者に、視力、視野、色覚、全視野刺激網膜電図、蛍光造影眼底検査、分光感度測定を施行した。インフォームド・コンセントを得た後、末梢静脈血よりゲノムDNAを抽出し候補遺伝子の全翻訳領域に対しPCR法により塩基配列を決定した。コロイデレミアでは新規REP1変異(IVS6-2A>T)、小口病では新規GRKl変異(Pro391His)をホモ接合で、クリスタリン網膜症ではCYP4V2のイントロン2にスプライト変異とイントロン7の欠失変異を複合ヘテロ接合で認めた。家族性ドルーゼンでは、過去に欧米で報告されている唯一のEFEMP1遺伝子変異(Arg345Trp)が日本人症例でも見つかった。家族性ドルーゼン以外では、欧米では報告されていない日本人特有の遺伝子変異を認めた。クリスタリン網膜症症例では、明らかにホモ接合体に比べ、複合ヘテロ接合体で視機能障害が軽度であることが明らかになった。家族性ドルーゼンに関しては、日本人症例としては最初のEFEMP1変異をもつ家系を報告し、家系構成員の中に加齢黄斑変性に伴う脈絡膜新生血管と類似の病態が見つかり、病因の類似性が示唆された。今後は、ハプロタイプ解析を行い、日本人の創始者変異によるものか検討する予定である。遺伝子変異と病態の関連性については、さらなる検討が必要である。
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