研究概要 |
網膜ジストロフィの大部分は、遺伝性の疾患で多種の疾患が含まれる。病初期では、網膜視細胞や網膜色素上皮の機能障害に伴い、夜盲、黄斑変性、色覚異常、視力・視野障害が出現する。網膜ジストロフィのなかで小口病、家族性滲出性硝子体網膜症、家族性ドルーゼンに対し、SAG, FZD4, EFEMP1遺伝子解析を行った。対象者に、視力・視野・色覚検査、全視野刺激網膜電図・眼球電図検査、蛍光造影眼底検査を施行した。インフォームド・コンセントを得た後、末梢静脈血よりゲノムDNAを抽出し候補遺伝子の全翻訳領域に対しPCR法により塩基配列を決定した。小口病ではSAG変異(1147delA)をホモ接合で、家族性滲出性硝子体網膜症では新規のFEVR変異(Gly530Glu)をヘテロ接合で認めた。Gly530は、脊椎動物種間で保存されていることから機能的に重要なアミノ酸部位である可能性があり、FEVRの原因と考えられた。家族性ドルーゼンではEFEMP1遺伝子変異(Arg345Trp)が見つかり、欧米人で報告されている唯一の変異と同一であった。そこで、ハプロタイプ解析として遺伝子変異周辺のSNPsおよびマイクロサテライトマーカを用い、欧米人家系と比較した。その結果、Arg345Trp変異周辺のマーカ配列は欧米人のものと異なっていた。日本人家系と欧米人家系では、異なったハプロタイプを有しており、それぞれの人種の祖先で遺伝子変異が独立に発生した可能性が考えられた。しかし、遺伝子変異と病態の関連性については、さらなる検討が必要である。
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