拒絶制御における主なアプローチには(a)拒絶反応の誘導経路の遮断、(b)抗原性、免疫原性の少ないドナー組織の提供、(c)ドナー抗原に対するトレランスの誘導、があげられる。我々はTh1制御の臨床展開を目指して、Th1抑制による拒絶抑制や、抗原提示細胞内のグルタチオンレドックス制御による臨床応用可能なTh1環境抑制によって著明な拒絶抑制を可能にした。また、Th1抑制による拒絶抑制手法ではMHC適合が必須と考えられていたが、部分的なMHC適合によってもMHC適合と同様の拒絶制御が可能であることを明らかにした。BALB/cマウスをホストとするモデル実験の結果からは、臨床展開が可能で安全な拒絶制御手法が確立したと思量された。しかし、もとより高頻度、且つ、強い拒絶応答を生じるC57BL/6マウスをホストに用いた場合には、Th1抑制手法を用いた拒絶率が50〜100%に上昇し、INF-γKOマウスをホストに用いた場合でさえもMHC適合移植が100%拒絶された。また、CD4+ T細胞がC57BL/6マウスにおいても拒絶応答の要であり、そして、INF-γKOマウスにおけるminor抗原に対する局所拒絶応答は好中球浸潤が主体であったことから、好中球浸潤を特徴とするTh17応答が拒絶応答の主体ではないかと仮定した。しかし、IL-17KOマウスをホストに用いても、さらにIL-17KOマウスに抗INF-γ抗体による抗体治療を施した場合でさえも100%拒絶され、依然、好中球主体の拒絶応答がみられた。従って、INF-γ/IL-17非依存性の好中球主体の拒絶に関しては、臨床展開を行う前に拒絶応答の機序解明と拒絶制御手法の開発が必要と考えるに至った。また、Th1制御による拒絶応答の制御には、代償する免疫応答を誘導しないような、時期・抑制強度・新規の戦略などが必要と思われた。
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