研究概要 |
網膜血管形成不全疾患の代表な遺伝性疾患である家族性滲出性硝子体網膜症について研究を推進した。家族性滲出性硝子体網膜症は遺伝的に多様な疾患であり、多くの原因遺伝子の存在が推定されている。現在知られている原因遺伝子はいずれもWntシグナル伝達系蛋白をコードしており、このシグナル伝達系は生物に普遍的に存在し発生や癌化に関与することが知られている。本症の一部がWntシグナルの障害が原因であることが明らかとなっており、原因遺伝子としてFZD4,LRP5,NDPの3つの遺伝子が知られている。今回、この3つの遺伝子解析を進め、既報に加え、さらに新規の変異を含む多数例の遺伝子異常を同定し、遺伝子異常と臨床像に関する詳細な検討を行った。また、眼科所見以外の特異的な臨床像である骨密度の低下と眼科所見の重症度に関する研究を行い、成果を発表した(Kondo et al.:ARVO Meeting,2008) 家族性滲出性硝子体網膜症以外の遺伝性網膜血管形成不全疾患としてNorrie病、Stickler症候群、Waardenburg症候群、色素失調症について、その臨床像と遺伝子変異の対応を明らかにした(Shima et al.: Arch Ophthalmol 2009、近藤:第62回臨床眼科学会2008[東京])。 網膜血管形成不全疾患の代表疾患であり、多因子遺伝が想定されている未熟児網膜症についてその臨床像に関する詳細な検討を推進した。未熟児網膜症の遺伝素因の背景となる重症化について治療面での研究を行いその重要性を明らかにした(Kondo et al.:Am J Ophthalmol 2009,近藤:日本眼科学会シンポジウム2008[東京])。
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