研究概要 |
Cone型網膜前駆細胞をpOct3/4-EGFP Tgマウスで濃縮し培養を行った。LIFを含む培地で基質非依存的に増殖しsphereを形成すること、さらに得られたsphereをラミニン上で培養することでRod型視細胞、ミュラーグリア細胞、アマクリン細胞といった他の網膜神経細胞へ分化することを確認し、Cone型視細胞の形質を獲得しているにもかかわらず、他の神経へ分化転換するという可塑性を有することを明らかにした。 それらの細胞は生体内では増殖せず静止状態にあるが、網膜器官培養を実施するとBrdUの取り込みにより増殖を開始することを確認した。この結果からCone型網膜前駆細胞は、組織傷害時などには細胞分裂を開始し他の神経を生み出す幹細胞として機能しうることが示唆された。 Cone型網膜前駆細胞の分子基盤を知るために網羅的解析を実施した結果、ヒトの網膜変性疾患原因遺伝子の他種類が高発現していることが分かった。また、癌関連遺伝子も上位にリストアップされた。それらの遺伝子の発現はRT-PCR法にて確認し、各々の機能解析はsiRNA法などで検証を進めている。その中で最も細胞特異性が高い遺伝子としてOct-3/4に着目して引き続き解析を進めた結果、初期胚やES細胞などで従来しられている全長タイプの転写産物ではなく、exonlを欠損したvariant型の転写産物が発現することを明らかにし、マウスOct3/4variant型遺伝子の最初の同定に成功した(JBC, Mizuno and Kosaka,2008)。またvariant型の転写調節領域も新たに同定しその領域を使ってvariant型発現細胞をEGFPで可視化するトランスジェニックマウスも新たに作製し、今後Oct-3/4variant型発現体細胞の挙動解析のための有効なツールを得た。
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