研究概要 |
1.視野計によるON潜時とOFF潜時の計測:【健常眼】若年(35歳未満)と中年(50歳以上)のON反応潜時、OFF反応潜時の比較では、中年でやや反応時間が遅れる傾向があったが、いずれの刺激光においても統計的に有意な差はなかった。【緑内障眼】4眼でしか検査できなかったので、統計処理はできず、確定的な傾向はまだ認められない。しかしいずれも急速なON反応潜時がやや遅い傾向が見られた。OFF反応潜時はいずれの刺激に対してもばらつきが大きく、OFF反応の認識が正確でない可能性がある。【結論】ON反応潜時の遅れが見いだされたことは予想外であり、今後の確かめる必要がある。視野計にゲーム感覚を取り入れることにより、検査の緊張が和らげられることがわかった。 2.プロスタグランジン系緑内障治療薬unoprostoneによる視神経再生の促進:【培養下での突起伸展】ネコ網膜のTUJ1陽性の突起伸展に対するunoprostoneの促進作用は3μMで最も高く、30μMでは3μMでの突起数の1/5に減少しており、高濃度での阻害作用を示した。溶媒はDMSOあるいはPolysorbateのいずれでも効果に変わりはなかった。GFAP陽性突起はいずれの濃度でもほとんど認められず、unoprostoneは神経突起のみに伸展作用があることがわかった。【挫滅視神経内での軸索再生】3μMと10μMのunoprostoneを挫滅したネコ視神経に注入し、2週間後にWGA順行性標識法で再生軸索数を数えた。3μM注入視神経の0.5mm部位で平均約3,000と、ROCK阻害剤のY39983 10μM注入とほぼ同数の再生軸米が認められた。10μM注入視神経では約2,000に減少していた。【結論】プロスタグランジン系緑内障治療薬にも視神経再生の促進作用がある。細胞内伝達経路のどこに作用しているかを調べることが今後の課題である。
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