研究概要 |
鎖肛は小児外科で施行する新生児手術の中で最も頻度が多く、その機能予後は依然として改善の余地が大きい。鎖肛の遺伝様式の解明は、疾患の予防、根絶につながる重要な基礎研究である。 我々はこれまでに鎖肛ブタモデルによってこの複雑な多因子遺伝の解明に取り組んできた。多因子遺伝の研究には、患者対照研究にしても連鎖解析にしても何千というサンプルが必要になりヒトでは事実上不可能である。我々は自然発症の鎖肛ブタを手術で救命し交配することによって鎖肛を高率に発症する筑波鎖肛ブタ家系を構築した。これを他の家系と交配して遺伝解析用のバッククロス家系を作りサンプルを全て保存した。これまでの研究によって、責任遺伝子の主座は15番染色体上にあり、GLI2遺伝子が候補遺伝子として同定された。 本研究の目的は、鎖肛の遺伝様式のなかでさらにGLI2遺伝子のどこにどのような変異がおこると鎖肛発症につながるのか、について調べることである。SNPをマーカーとしてGLI2遺伝子における連鎖解析を行い、鎖肛発症に関連する領域を特定して行きたい。 1)筑波鎖肛ブタ家系のDNAサンプル調整 バッククロス家系(N=545)の全検体について筑波大学の実験室に-80℃で保存してある組織検体からFUJIFILMのQuickGene-800を用いてDNAを抽出した。貴重なサンプルを今後の研究のために使いはたさないように、ゲノムDNA増幅を行った。 2)GLI2遺伝子のSNP解析 遺伝子相同性を利用してこれまでにExonl,2,11からそれぞれ766,846,900bpの塩基配列を得た。各塩基配列には各々13,8,6個のSNPを含まれていた。この結果からこの家系においてGLI2遺伝子に含まれるSNPの頻度は約1%であることがわかった。今後SNPタイピングを進める上でSNPが連鎖解析の良いマーカーとなりうることが確認できた。
|