研究概要 |
過去の研究で,小児の膵胆管合流異常の症状はlithostathineでできたタンパク栓の閉塞機序により生じることを解明した。この症状発現機序に基づき,臨床例において発症後に可及的早期の内視鏡的胆道膵管造影を実施して,タンパク栓の存在を実証するとともに,その除去法を開発する臨床研究と,実際に摘出されたタンパク栓を用いて,各種薬品を用いた溶解実験をおこなう基礎研究を実施した。臨床例では黄疸や腹痛が遷延増強する6名の患児に対して,早期に内視鏡的胆道膵管造影を実施し,全例でタンパク栓の存在を明らかにした。同時に内視鏡的胆道ドレナージチューブの挿入留置を試みたところ,5名で留置に成功し,すみやかな症状消失が得られた。留置できなかった1名でも,内視鏡操作によりタンパク栓は除去され,症状の消失が得られた。膵胆管合流異常患児に対する内視鏡的胆道ドレナージが新治療法としてほぼ確立された。同期間に2名の患児からタンパク栓が得られ,基礎研究に用いた。タンパク栓のうち径約2mmのタンパク栓を溶解実験に用いた。溶解剤として,慢性膵炎や胆石の治療に用いられるブロムヘキシン塩酸塩(bromhexine)とデヒドロコール酸を用いた。溶解反応はデジタルマイクロスコープ(VH-5910,キーエンス)で100倍に拡大して観察し,録画した。0.1%bromhexine溶液中でproteinplugは20-30分で完全に溶解した。0.03%では溶解速度が低下し,0.01%では溶解しなかった。デヒドロコール酸溶液では全く溶解しなかった。Bromhexineは,線維の凝集過程と形成過程に作用してタンパク栓を溶解させると考えられ,合流異常に合併した腹痛や黄疸などの治療薬となる可能性が示された。
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