研究概要 |
先に報告されたPAX3-FKHR融合遺伝子に対するRNA干渉を行うと細胞増殖抑制が得られるとされる論文「Kikuchi K,et al:Effects of PAX3-FKHR on malignant phenotypes in alveolar rhabdomyosarcoma.Biochem Biophys Res Commun 365:568-574,2008」に示されたsiRNAを用い、生体内での導入に適しており、将来の臨床応用に有用であると思われるHVJ-envelope法にて細胞内に導入を試みた。しかしながら融合遺伝子の発現抑制を達成するために必要な導入効率は得られなかった。発表されたsiRNA以外のsiRNAも数種類作成したが、これも有意な発現抑制をもたらすことはできなかった。また、もう一つのPAX7-FKHR融合遺伝子に対するRNA干渉も計画したが、PAX7-FKHR融合遺伝子を発現している胞巣型細胞株が得られず断念した。新たな横紋筋肉腫の分子標的として、Hedgehog signaling pathwayに着目し、その構成転写因子であるGli1の発現を検討したところ、横紋筋肉腫細胞株において発現亢進が認められた。そこで、Gli1に対する阻害剤であるFSKを投与したところ、濃度依存性に細胞増殖を抑制することができた。この点に着目し、ヌードマウスに移植した横紋筋肉腫に対し、FSKを投与したところ、腫瘍増殖抑制効果を得ることができた。したがって横紋筋肉腫に対する分子標的としてHedgehog signaling pathwayが有力であることが明かとなった。
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