まず、preliminaryな実験として、臨床例における薬剤耐性遺伝子発現を検討した。当科で治療を行なった小児悪性固形腫瘍のうち、化学療法の前後で腫瘍組織が得られた24例(神経芽腫8例、肝芽腫8例、Wilms腫瘍4例、横紋筋肉腫4例)ついて、多剤耐性遺伝子MDR1、MRP1、LRPの遺伝子産物であるP-glycoprotein、 Multi-drug resistance-associated protein1、 lung resistance-related proteinに対するモノクローナル抗体を用いて免疫染色による発現を検索した。この結果、MDR1は検討した腫瘍の初回耐性、獲得耐性いずれにも関与すると考えられ、MRP1は神経芽腫の初回耐性と、Wilms腫瘍以外の腫瘍の耐性獲得に関与すると考えられた。LRPは肝芽腫とWilms腫瘍の耐性獲得に関与することが示唆された。この結果により、神経芽腫においては、当初の計画であるMRP1に加え、MDR1の発現抑制も有用である可能性が示唆された。同時に、神経芽腫細胞株の薬剤耐性サブクローンの確立を行うべく種々の細胞を種々の濃度下において培養中である。ただし、薬剤耐性サブクローンが得られ、かつsiRNA導入効率がよい安定した細胞株が本実験には必要であるため、さらに検討中である。また、薬剤耐性株のヌードマウスへの移植実験に備え、マウスの麻酔およびランダムなsiRNA投与実験を行い、副作用発現について検索を行っている。
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