申請者らは腸-脳相関に着目・研究し、消化管運動ホルモンである神経ペプチドbombesinの有用性についてラット異所性小腸移植モデルを用いて、以下の4点について明らかにしてきた。i)bombesinを移植後に投与することにより、全身性免疫抑制状態においても移植グラフトの粘膜を正常に近い状態に維持できる作用があること。ii)bombesinを術前に投与することで移植後の虚血再還流障害を予防し、早期から移植グラフトの粘膜再生を促進することができること。iii)bombesinを投与することで移植後急性期における拒絶反応を抑制するのに必要なFK506の量を1/3〜1/5にまで減量できること。iv)FK506は移植腸管の壁内神経節に対しても毒性を有しており、移植後の壁内神経節は形態学上著明な萎縮を認めること。さらには移植後にbombesinを投与することによりこの壁内神経節の萎縮が防止できること。 これに加え、移植腸管壁内の消化管運動ペースメーカ細胞であるCajal細胞(c-kit陽性細胞)も正常腸管と同じレベルに維持されることが判明した。 現在、上記に示すbombesinの作用が同所性移植モデルにおいても有効であるかを検討するため、微小血管吻合の技術を用いて同所性移植モデルを作成し、移植後の免疫抑制剤の量をどこまで減らせるか、そしてその際、全身の感染症に対する予防にどの程度効果があるかなどを検証するべく、栄養吸収の評価、神経細胞温存の評価、消化器および呼吸器粘膜の免疫グロブリン分泌に対する影響などを解析しているところである。
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