本年度は同所性ラット小腸移植モデルの作成を安定化し、免疫抑制剤投与下でbombesinが小腸粘膜、神経などの構造維持、あるいは粘膜免疫応答性などの維持にどの程度効果があるのかを解析した。その結果、従来の異所性モデルと同様、粘膜構造の維持に関してはbombesin非投与群に比較してbombesin投与群で優意に小腸粘膜のvilliの構造が維持され、また、enteric nervous systemに関してもbombesinを投与することにより神経節細胞およびCajar細胞の萎縮が予防できることが判明した。すなわち、同所性小腸移植モデルにおいても神経ペプチドであるbombesinが急性拒絶反応を悪化させることなく、移植腸管の構造維持にきわめて有効であることが明らかとなった。 次に、これらの構造維持が移植後のグラフト腸管の栄養吸収能維持、および粘膜免疫応答性の維持に有効であるかについて解析を試みたが、現在のところ、安定したデータを得ることが難しく、これらの機能維持に関してbombesin投与が有効であるかどうかの結論は得られていない。 今後、さらにこれらの機能維持についての解析を進め、移植医療の中でももっとも困難な小腸移植が安全に行えるようさらに検討していく予定である。さらに、移植医療だけではなく、短小腸症候群の移植前の消化管機能維持および肝不全予防にbombesin投与が有効であるかも今後の課題である。
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