研究課題
In vitro系(ラット小腸上皮細胞、IEC-6)を用いて、スタチンの誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)誘導への効果を検討した。小腸上皮細胞(IEC-6)を調製し、iNOS誘導に関与する炎症性サイトカインinterleukin(IL)-1β、多面的作用を持つHMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)のpitavastatin(興和)の一酸化窒素(NO)産生への効果をみた。その結果、IEC-6にIL-1βあるいはpitavastatinを単独で添加してもNO産生は認められないが、両者を同時投与することによりNO産生が増強された。また同時投与によりiNOS proteinおよびmRNAレベルも同様に増加を示した。しかしAitavastatinはIL-1βのNF-κBの活性化には影響を与えなかった。PitavastatinはさらにIL-1βとEGFの相乗効果によるNO産生に対しても強い増強効果を示した。この効果はメバロン酸によりブロックされた。Pitavastatinの作用メカニズムがEGFと同じか否かは不明であるが、IL-1βとの共存下でiNOS誘導を転写レベルで制御していると考えられる。動物モデルにおいてPitavastatinのEGFと同様な腸管保護効果が期待できる。さらに、pitavastatinはin vitro系(ラット初代培養肝細胞)を用いたiNOS誘導への効果においても、IEC-6と同様にIL-1βのiNOS誘導を転写レベルと転写後調節の両段階を介して促進していることが明らかになった。特に後者の転写後調節ではiNOS mRNAの安定化に関与するiNOS遺伝子のアンチセンス転写物の発現を増加させることもわかった。また同様の効果が抗潰瘍剤rebamipideでも認められた。以上の結果はNO産生促進効果を持つ様々な薬剤がiNos/NO産生の誘導を介して、小腸保護に関与する可能性を示唆する。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Nitric Oxide-Biol Chem 18(1)
ページ: 19-27
ページ: 28-36