研究概要 |
1)In vitro系(ラット小腸上皮細胞、IEC-6)を用いて、スタチンの誘導型一酸化窒素合成酵素(inducible nitric oxide synthase, iNOS)誘導への効果を検討した。その結果、IEC-6にIL-1βあるいはpitavastatinを単独で添加しても一酸化窒素(NO)産生は認められないが、両者を同時投与することによりNO産生が増強された。また同時投与によりiNOS proteinおよびmRNAレベルも同様に増加を示した。pitavastatinはさらにIL-1βと上皮成長因子(epidermal growth factor, EGF)の相乗効果によるNO産生に対しても強い増強効果を示した。この効果はメバロン酸によりブロックされた。さらに、pitavastatinはin vitro系(ラット初代培養肝細胞)を用いたiNOS誘導への効果においても、IEC-6と同様にIL-1βのiNOS誘導を転写レベルと転写後調節の両段階を介して促進した。特に後者の転写後調節ではiNOS mRNAの安定化に関与するiNOS遺伝子のアンチセンス転写物の発現を増加させた。また同様の効果が抗潰瘍剤rebamipideでも認められた。 2)小腸移植後の腸管機能の回復とiNOSとの関係を明確にするために、ラット小腸の虚血・再灌流(ischemia-reperfusion, IR)モデルを用いて、組織障害の回復過程におけるiNOS の発現誘導を解析した。IRモデルはラット(雄性、Sprague-Dawly, 8週齢;250-300g)の小腸虚血(上腸間膜動脈45分clamp)を作製し、再灌流後経時的(1-6時間)に回腸を摘出した。虚血直後は絨毛先端の粘膜上皮細胞の剥脱が顕著であったが、再灌流1時間で剥脱部位への上皮細胞の移動が認められた。再灌流3-6時間では絨毛先端の回復を示した。回腸の粘膜部分を採集し、RT-PCR法に従ってRNA 抽出を行いiNOS mRNAを測定し、equal loadingの指標としてelongation factor 1αを解析した。虚血45分のラットではiNOS mRNAレベルの増加傾向がみとめられたが、sham control(開腹してclampなし)のiNOS mRNA basalレベルはラットの個体ごとに大きく変動した。
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