研究課題
形成外科的欠損部位における組織修復の必須技法の一つに脂肪組織の自己移植がある。すでに臨床技術として有用かつ普及している技術であるにも関わらず、移植された脂肪組織の安定性は個々の病態や方法により一定ではなく、その原因として、採取脂肪組織の多様性、移植脂肪の調整技術への依存性、移植組織の生着に関わる宿主側の環境要因等があげられる。移植脂肪組織が安全に効率よく生着するには、細胞外マトリックスの存在下でVEGFをはじめとするサイトカインを適切に誘導しやすい細胞外環境を整備することが重要と考えられる。本研究の目的は、脂肪細胞が脂肪組織を構築するため調節機構をとりわけVEGFなどのサイトカイン産生から明らかにし、移植脂肪組織の生着率を向上させる安全な細胞外環境と血管新生誘導因子を明らかにすることである。本研究成果から、bFGFの移植脂肪の生着率を向上する作用にMMP2遺伝子発現誘導作用が関わることが示された。MMPによる細胞外マトリックス分解作用、細胞外環境の最適化、またHMPによるさまざまな分子の活性化が脂肪細胞の生着に関わる。MMP3は脂肪細胞の脂肪酸によるVEGF発現を増強し、この作用によりマクロファージが脂肪細胞のVEGF発現を亢進させることからVEGF発現を亢進することが移植脂肪の生存を向上させる機序に存在すると考えられる。これらの研究成績から、MMP発現を亢進する作用を有する活性物質の長期補充により移植脂肪の生着率を亢進することが可能であると考えられる。また、GH補充療法が脂肪細胞におけるTLR2/TNF-α発現細胞の出現を抑制することが明らかになり、本研究による基礎研究成果を組み合わせることによりホルモンや活性物質等を用いた新たな脂肪細胞移植医療の可能性が考えられる。
すべて 2008
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