研究概要 |
皮下脂肪組織には、未分化な幹細胞が豊富に含まれていて、その採取も容易なことから体性幹細胞のソースとして注目を集めている。一方、大網は、豊富な脂肪組織を含み、血管が極めて豊富であると同時に、その内部に特殊なリンパ組織(大網乳斑)を有している。そこで、本研究は、脂肪組織から幹細胞を得る技術を大網へ応用して、大網に含まれる幹細胞について分化能を評価するとともに、皮下脂肪組織と異なる大網の特性を見出すことを目的とした。 大網からのstromal vascular fraction(SVF)は、高血清のFD20培地および低血清のFL2培地にてほぼ無限の増殖を示したが、低血清のFL2培地の方が増殖が速かった。脂肪細胞への分化は皮下脂肪と同様な方法(DMEM培地に10%FBS,IBMX,デキサメサゾン、インシュリン)で分化誘導できることを確認した。骨芽細胞への分化は、DMEM培地に10%FBS、デキサメソゾン、アスコルビン酸、グリセロールフォスフェイトを加えた(通常の)骨誘導培地では骨誘導が乏しかった。さらに、BMP-2とレチノイン酸(RA)を添加して検討した結果は、皮下脂肪ではRAを必要としたが、大網ではBMP-2のみが存在するときに骨への分化が効率的におこった。また、軟骨への分化は、皮下脂肪の軟骨誘導培地(DMEM培地+TGFβ)では乏しく、低血清(FBS2%)のFL2培地+LIFにて効率的に軟骨への分化が起こることがわかった。
|