研究概要 |
本年度は、昨年度の実験で安定して作成できるようになった、ラット慢性期脊髄損傷に細胞外マトリクスとしてアルギン酸ゲルを移植する実験を行った。Wistar系4週齢♀ラットの胸髄(Th8)のレベルで、脊髄硬膜を露出し、硬膜外より10gのおもりを6.25cmの高さから落とし、脊髄に圧挫損傷を作成する。その際、損傷部位にマーキングをしておく。作成2週間後に再び椎弓切除を行い、マーキングをの部位に形成された脊髄空洞にアルギン酸ゲルを注入する。脊髄空洞の容積はおよそ0.3-0.5mlで安定していた。空洞内の脳脊髄液を硬膜外よりシリンジで吸引し、同量のアルギン酸ゲルを注入した。注入には30Gの注射針を研磨したものを用い、さらなる脊髄損傷を起こさないように注意した。注入する際に少し難しい面があったが、安全に、安定して注入できるようになった。注入後、ラットの後肢の運動を観察したが、さらなる脊髄損傷の徴候は見られなかった。 その後、アルギン酸にヘパリン様ペプチドを結合させたゲルを作成した。このアルギン酸ゲルは塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)と結合し、アルギン酸の分解と共にbFGFが徐放されることがわかっている。同様に脊髄空洞内に注入した。 ゲル注入後2, 4, 8週で損傷した脊髄を取り出し、標本を作製した。現在作製した標本は現在、染色検討中である。 また、浸透圧ポンプを使用して液性因子を持続投与する準備も出来ており、本年度の結果を検討し、来年度実施する予定である。液性因子としては、NGF、NT-3、HGF、抗NOGO抗体などを考えている。また、慢性期脊髄損傷再生阻害の大きな要因である、線維性瘢痕に対し、その主成分であるコンドロイチン硫酸を融解する酵素Chondroitinase ABCの投与も予定している。
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