研究概要 |
Angiopoietin-related growth factorを表皮特異的に発現したトランスジェニックマウス(AGF TG)を用いて、紫外線照射(UVB)を行った。1.最小紅斑量(MED)を測定した。MED:75mJ/cm2, AGFTG;50mJ/cm2,野生型。以上より、AGF-TGは光線過敏を呈することが明らかとなった。2.AGF-TGにおける血管拡張能を評価した。マウス耳介に200mJ/cm2を単回照射、48時間後に組織標本を作成し、顕微鏡下に観察した。この結果、AGF TGの真皮血管は有意に拡張しており、肉眼的に観察した光線過敏が裏付けられた。さらに、リンパ管に対する特異抗体で観察すると、UVB照射後のAGF TG皮膚では、リンパ管も拡張していることが見出された。3.UVB照射による表皮変化を評価した。組織学的にAGF TGの表皮は肥厚し、sun burn cellも数多く観察された。すなわち、AGF TGでは光線皮膚障害を来しやすく、AGFは皮膚に炎症を惹起する可能性が示唆された。4,AGF TGに光老化試験を行った。AGF TGの皮膚露光部では、野生型に比べて紅斑と皺形成が肉眼的に明らかに認められた。組織学的には血管新生が明瞭に誘導されており、電子顕微鏡下で観察すると、表皮直下の膠原線維が著しく減少し、炎症細胞浸潤が見られた。すなわち、本研究課題からAGFは光老化を誘導し、細胞外マトリックスを変性させ、皺形成を促進する新たな因子の一つであることが明らかとなった。
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