BALB/cA<CSA>系マウス大腿骨より髄腔内の細胞を取り出して培養し、非付着性細胞を除いた後、トリプシン-EDTA処理による培養ディッシュへの付着性の違いを利用して骨髄由来間葉系幹細胞を分離し、BALB/cA系マウスの大腿静脈内に移植した。移植に用いた細胞は、1)採取後2回継代された細胞、2)継代を繰り返し、神経細胞様あるいは敷石状に増殖する細胞、これらはCD34(STRO-1)は陰性であり、CD29(lntegrin β1)とCD49e(lntegrin α5)に陽性を示した。3)骨髄由来細胞よりコロニアルクローニング法を用いて分離された間葉系幹細胞、これらはCD34陽性、一部がCD29陽性、CD49e陽性、CD44陽性であり、一部は幼弱神経細胞マーカーであるNestinに陽性を示した。なお、2)あるいは3)をマウス新生仔の脳、成獣の精巣や脾臓に移植したところ、新生仔の頭部皮下や精巣周囲、脾臓内に腫瘤を形成した。 血管内移植後、1ないし6カ月後に屠殺し、全身の臓器および脳を調べたところ、抗CSA抗体に陽性であるBALB/cA^<csA>系マウス由来の細胞は全く見出されなかった。そこで、血管内移植直後を調べた結果、移植直後には肺の血管内にのみ抗CSA抗体陽性細胞が検出され、その後数は減少するものの4日目までは肺の血管内にのみ見られ、他の臓器には全く検出されなかった。 以上の結果より、組織内に移植された場合には腫瘤を形成する能力を有する骨髄由来の間葉系幹細胞も、正常動物の血管内に移植された場合には内皮細胞に妨げられて血管内に生着することができず、消失してしまうことが明らかとなった。このことは、骨髄由来間葉系幹細胞は血管内に漏出しても遠隔地に腫瘍を形成する可能性は低いことを示している。
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