研究概要 |
GFP遺伝子が導入されたC57BL/6-Tgマウス(以下GFP陽性マウス)の鼡径部より我々がこれまでに報告してきた脂肪組織由来幹細胞を含むASC精製プロトコールに従ってASCを獲得した。すなわち、約lgの脂肪塊を採取し、細切した後コラゲナーゼ処理し、幹細胞を含むと考えられる間質細胞を採取した。この初代継代ASCを10%FBS添加DME培地内で培養、継代を繰り返した。第3継代ASCをトリプシン処理後、細胞浮遊液を作成し移植に供した。次に野生型C57BL/6-Tgマウス(以下GFP陰性マウス)の両側大腿動静賑を完全に切離し下肢虚血モデルを作成し、準備しておいたGFP陽性マウス由来ASC2.5x106個を片側の下肢筋肉内に注入移植した。対側にはPBSを注入しコントロール群とした。移植後1,3,7,10,14,28日目に安楽死させ、肉眼的な虚血下肢の状態を観察後、下肢組織を採取し組織学的検索に供した。また移植後7,14,28日目には組織採取に先立ち赤外線サーモグラフィーによる皮膚音測定、選択的血管造影による下肢血行の評価も行った。 肉眼的には術後2日目よりコントロール群で足の壊死を来すものが出現し、その発現頻度は実験群と比較し経時的に増加した。血管造影所見にて細胞移植群はコントロールに比べて血流の改善が見られた。採取組織中の血管内皮細胞全体に占めるGFP陽性細胞の存在は、移植初期に確認され7日目において約10-15%程度であり、その後その割合は大きな変化はなかった。一方、免疫染色所見による各種血管成長因子(VEGF,bFGF)の発現の程度は、細胞移植後早期よりコントロールに比べて発現が上昇し、移植後後期まで持続した。ASCの血管内皮細胞への分化の程度と血管成長因子の発現との経時的な相関関係は明らかでなかったが、移植細胞中の血管内皮細胞への分化率が低いことを鑑みると、血管再生効果は血管成長因子の効果が大であると推測した。
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