研究課題
【目的】血小板濃縮血漿(PRP)は末梢血を濃縮することによって得られ、安価で安全なサイトカインの供給源として注目されている。慢性皮膚潰瘍の治療にも有効との報告もある。末梢血からPRPを分離する手法と同じ方法で骨髄穿刺液を濃縮すると、骨髄液中の血小板のみならず骨髄有核細胞も濃縮される。この骨髄有核細胞はいわゆる幹細胞を含み、虚血肢や虚血心筋内に注射することで血管再生をはじめとする組織再生に役立つことが注目されている。末梢血および骨髄血由来のPRP(各々pb-PRP,bm-PRPと略す)の慢性虚血肢の創傷治癒遅延に対する効果をウサギ慢性虚血肢モデルを用いて検証した。【方法】ウサギの一側後肢の大腿動脈を結紮、摘出した。3週間後虚血肢下腿外側に2x2cmの皮膚欠損創を作成した。pb-PRP群では耳介の静脈から得た末梢血2mlを遠心分離してpb-PRP 200μlを創床に注射した。bm-PRP群では腸骨を穿刺して吸引した骨髄液2mlを遠心分離してbm-PRP 200μlを創床に注射した。虚血生食群は生理食塩水200μlを創床に注射した。また健常肢下腿内側に2x2cmの皮膚欠損創を作成し生理食塩水を200μl創床に注射し健常群とした。経時的に創傷の上皮化状態を観察し、未上皮化面積を測定した。つぎにpb-PRPおよびbm-PRPを分離した後、その細胞成分を蛍光色素DiIにて標識した後、創床に注射し、経時的に組織を採取し、蛍光顕微鏡下に観察した。【結果】健常群と虚血生食群間では7日目、21日目で未上皮化面積の有意な差を認め、虚血が創傷治癒の遅延をもたらしていることが確認された。pb-PRP群は虚血生食群との間に差を認めることができなかった。bm-PRP群は7日目、14日目、21日目において虚血生食群、pb-PRP群との間に有意な差が見られ、創傷治癒促進の効果があることが示された。蛍光色素による追跡ではpb-PRPの細胞成分は早期に減少するのに対して、bm-PRPでは4週後でも集簇する強い蛍光が観察され、移植細胞の生存が確認された。
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