高齢ラットを用いた虚血再灌流性急性腎障害モデルでは、虚血再灌流に伴いTNF-α、CINC(cytokine-induced neutrophil chemoattractant)およびMPOの上昇、腎血管透過性の亢進、腎組織血流の低下およびBUN、 creatlnineの上昇を認めた。これに対しATIIIはこれらの変化を有意に改善した。さらに虚血再灌流に伴う、生体防御反応としてのPGI_2およびカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide: CGRP)産生を更に増強した。 このATIIIの効果が、その抗凝固作用に依存するかを確認するために、ATIIIと同等の抗凝固作用を有するトロンビン選択的阻害薬のDEGR.XaではATIIIのこれらの改善効果を認めなかった。 PGI_2作動薬のIlprostではATIIIと同様の効果を認めた。ATIIIの効果が、知覚神経活性化により放出されるCGRPが血管内皮細胞血管上のCGRP受容体を介するPGI_2産生を亢進するに依存する事を解明するために、ATIII投与前にCapsazepine(バニロイド受容体阻害薬)、CGRP8-37(血管内皮細胞上のCGRP受容体阻害薬)、Indomethacin(PGI_2阻害薬)で前処置すると、ATIIIの効果は拮抗された。 以上より高齢ラットを用いた虚血再灌流性急性腎障害モデルでは、ATIIIの治療効果が認められた。その作用機序として知覚神経活性化により放出されるCGRPが血管内皮細胞血管から放出されるPGI_2産生を亢進する可能性が示唆された。
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