ADAMTS13はVWFのA2ドメインを切断しVWFサブユニットの重合数を規定することによりVWFの機能を調整している。つまり、ADAMTS13がVWFに作用しないと重合数の多いVWFが多くなり血小板粘着能が増加し、ADAMTS13が作用すれば短いVWFが多くなり血小板粘着が抑制されると考えられている。これらADAMTS13の生体内での働きを明らかにするために、まずはin vitroでのフロー実験を行なった。ずり速度が速くなればなるほどADAMTS13がVWFを切断することを示し、ADAMTS13が止血によりできた血栓の血管内腔進展を抑制し血管閉塞を防御している事を証明した。これを踏まえ、マウス生体内におけるADAMTS13の血栓抑制作用を検証した。ADAMTS13ノックアウトマウス(KO)とワイルドタイプマウス(WT)を用い、左内頚動脈より塞栓子を挿入して中大脳動脈(MCA)を30分間閉塞後、塞栓子を引き抜いてMCAを再灌流させ、皮質脳血流の変化、24時間後の脳梗塞巣の体積をKO群とWT群で比較検討した。再灌流後KO群ではWT群に比し血流速度が有意に低下し、脳梗塞巣体積はKO群の方がWT群に比し有意に増大していた。以上よりADAMTS13は生体内で脳虚血再灌流障害による微小循環障害を緩和し、梗塞巣の拡大を抑制し、また炎症の拡大をも抑制している事が明らかとなりリコンビナントADAMTS13が血栓抑制剤として使用可能であることが示唆された。
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