初年度は運動トレーニングラットの作成と申請者らが確立したアナフィラキシーモデルにおいて運動トレーニング効果を検討した。循環ショックの本質的なパラメーターである体血圧の低下に及ぼす影響はin vivoのモデルを用して検討し、肝循環への影響は摘出灌流肝臓のモデルを用いた。実験は運動トレーニングラット(運動群)と運動をさせないラット(対照群)において行った。 1)運動トレーニング 運動群:雄性SDラット(5週令)を4週間にわたって、週5回、小動物用トレッドミルを用いて、運動量を速度10m/minで10分間から開始し、漸増し、3週間目には速度30m/min出30分間を最大とし、この最大負荷をさらに4週目まで続けた。一方、対照群は非運動のラットを4週間にわたって毎日10分間だけ静止したトレッドミル内に入れた。 2)アナフィラキシーショック 抗原投与後の体血圧の低下と門脈圧の上昇、心拍数の変化を運動群と対照群の無麻酔ラットで比較した。運動ラットで体重ならびに心拍数は対照ラットに比較して有意に小さかった。しかしながら、抗原投与後の体血圧の低下、門脈圧の上昇、心拍数の上昇の程度は両群間に有意差がみられなかった。 3)肝アナフィラキシー in vivoと同様に感作したラットから摘出灌流した肝標本を作成し、抗原を灌流液内に投与して肝アナフィラキシーを惹起した。抗原投与後の門脈圧上昇は運動負荷ラット肝で有意に小さかった。しかしながら、毛細管圧を反映するdouble occlusion pressureは両群間で差がなく、その結果、運動負荷ラットはアナフィラキシー肝血管収縮反応は前類洞血管で低下していることが判明した。
|