最終年度はエンドトキシンショックと出血性ショックにおいて運動トレーニング効果を体血圧、門脈圧と生存時間について非運動対照群と比較検討した。 エンドトキシンショック:無麻酔ラットにE.colliエンドトキシン(LPS;10mg/kg)を静脈内投与した。運動群と対照群ともにLPSの投与により体血圧は一過性に10mmHg低下し、門脈圧は一過性に8cmH_2O上昇した。その後、運動群では体血圧は40分に再び一過性に低下したが元に復した。しかしながら、体血圧と門脈圧ともに両群間に有意差はなかった。なお、運動群では心拍数が投与前には有意に低かった。また、今回のLPSの投与では48時間後にも全例生存し両群問に有意差がなかった。今回のLPS投与量では運動の効果は見られなかった。 出血性ショック:麻酔下ラットの大腿動脈から体血圧が60mmHgになるまで毎分1ml/kgで脱血させ、その後還血した。さらに、門脈内にNorepinephrine(Nor;50nmol/kg)を投与し、門脈圧の反応性を比較検討した。体重は運動群が対照群に比べて20g少なかった。体血圧はbasal levelから運動群で高く、その後も対照群よりも高いレベルを維持したが両群ともに50分には60mmHgに達した。脱血血液量も両群間で有意差はなかった。また、還血後の体血圧も120分まで両群問に有意差はなかった。一方、Norに対する門脈圧の上昇反応は出血前では運動群で有意に大きかったが、出血後には両群間に差異は見られなかった。生存時間についても全例が出血後48時間に生存しており、運動の効果は評価し得なかった。以上より、basal levelでは運動ラットで体血圧ならびに門脈圧の反応性は高かったが、今回採用した運動の強度では出血に対する有意な効果は見られなかった。なお、この結果には両群問の体重差も影響していた可能性がある。
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