研究概要 |
歯原性腫瘍特にエナメル上皮腫は,生物学的には良性とされているものの,顎骨侵襲能が高く,再発率が高い(15-75%)ことが知られている。さらに,再発エナメル上皮腫では細胞学的な悪性所見がみられ癌化する例が経験される。また,組織学的,細胞学的には悪性所見を示さす転移を起こす症例のあることが報告されている。本研究では,歯原性腫瘍特にエナメル上皮腫について解析し,腫瘍特異的な癌抑制遺伝子候補を同定,解析することを目的としている。 平成19年度は本研究テーマの1年目であり,症例の選択と臨床病理学的解析を行った。その結果得られたエナメル上皮腫20症例についてパラフィンブロックからのDNA抽出を行いヘテロ接合性の消失解析(LOH解析)を行った。 PCR反応後、生成液2μlに、loading dyeを加え、95℃4分ヒートブロック後、氷上にて急冷する。8%Poly acrylamide gel電気泳動を行い、銀染色にてDNAを検出した。 腫瘍組織の相同染色体(ヘテロ接合)の2本のDNAバンドのうち、1本において、正常組織のDNAバンドに比してバンド強度が50%以下の場合をLOHケースとして計測した。LOH解析に当たっては,本年度は特にINGファミリーに着目し,ING1, ING2, ING3, ING4, ING5に特異的なプライマーを作製し解析した。 その結果,各INGファミリーメンバーによりLOH症例率には差が認められたものの,高率(約30-70%)にLOHが認められた。このことから,INGファミリー遺伝子の異常がエナメル上皮腫の発生に関与している可能性が考えられた。 平成20年度は19年度の結果を踏まえ,症例数の増加およびマイクロダイセクションを用いたより詳細な解析を行う。また検索が可能な症例については,遺伝子変異の解析,および発現解析を行う予定である。
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