研究概要 |
本研究では抗菌性ペプチドに着目し歯周病原因菌と歯肉上皮細胞の相互作用について分子レベルで検討し、歯周病原因菌感染機序の一端を解明することを目的としている。 平成20年度は昨年度に引き続きFusobacterium nucleatumの外膜タンパクに着目し病原生、抗菌性ペプチド産生誘導能に関する実験、抗菌性ペプチド強発現株を用いた実験を行い、以下の成果を得た。 (1)F. nucleatumの全外膜タンパクの同定:F. nucleatumのゲノム上に存在する外膜タンパクをコードする全遺伝子をクローニングし、大腸菌発現株の作製を行い、23遺伝子のうち17遺伝子については終了した。大腸菌発現株を用いた解析の結果、いくつかの外膜タンパクは共凝集に関与する因子、紡錘状の形態に関与すると考えられる因子、ポーリン様の因子である可能性が示唆された。抗菌性ペプチド産生能を著名に有する外膜タンパクは同定されていないが、F. nuccleatumは抗菌性ペプチド誘導能が強いことを確認しているため引き続き解析を行う意義はあると考える。以上の結果から、F. nucleatumの新しい病原性について示唆することができた。 (2)抗菌性ペプチド強発現株を用いた解析:KB細胞を用いたβディフェンシン1,2,3及びLL37について強発現株を作製した。しかし、mRNAレベルではいずれのペプチドも発現確認できたがペプチドレベルで確認できたのはβディフェンシン3のみであった。本細胞株を用い細菌の付着実験を行い、付着率の若干の低下が認められた。
|