研究概要 |
T1Rファミリー(T1R1, T1R2, T1R3)はうま味および甘味受容に関与している。この中でうま味受容に関与するT1R1遺伝子の転写調節機構は殆ど明らかになっていない。T1R1は味蕾以外にも、小腸、大腸および肝臓においてその発現が認められている。そこで本研究ではTIR1の発現が認められたヒト胆管由来細胞株HuCCT1およびヒト結腸由来細胞株Caco-2を用いて、プロモーター領域の検索および解析を行った。 HuCCT1およびCaco-2を用いたルシフェラーゼアッセイにより、ヒトT1R1遺伝子の-118〜-1(開始コドン:+1)にプロモーター領域の存在が明らかになった。さらに推定Sp1結合配列(-118〜-108)に欠失または部位特異的変異の導入を行い、ルシフェラーゼアッセイを行ったところ、T1R1の転写効率の大幅な(86%の)減少が認められた。この結果により推定Sp1結合配列がT1R1の転写の活性化に関与していることが推測された。次にSp1抗体を用いたゲルシフトアッセイにより、スーパーシフトバンドが検出されたことから、推定Sp1結合配列に結合する蛋白質はSp1であることが明らかになった。さらに、HuCCT1におけるSp1の過剰発現により転写活性が上昇することがルシフェラーゼアッセイにより明らかになった。 以上の結果よりヒトT1R1遺伝子においてその上流領域の-118〜-1(開始コドン:+1)にプロモーター領域が存在し、その領域中のSp1結合配列にSp1が結合することによりT1R1の転写を活性化していることが明らかになった。
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