研究概要 |
炎症性サイトカインは,骨芽細胞と破骨細胞に直接あるいは間接的に作用して炎症性の骨破壊を誘導する.そこで本年度は,インターロイキン(IL)-32が,骨代謝にどのような影響を及ぼすかを検討した.まず,骨芽細胞に対する影響を検討するため,マウス骨芽細胞様細胞であるMC3T3-E1細胞を用いて解析した.骨芽細胞様細胞にIL-32を作用させて,細胞増殖に対する影響をWST-8assayによって調べた.また,骨芽細胞の分化に及ぼす影響を解析するため,骨芽細胞の分化の指標とされるアルカリホスファターゼ(ALP)を指標に解析した.しかしながら,IL-32は,骨芽細胞の増殖や分化に対して影響をおよぼさなかった.また,骨芽細胞の破骨細胞形成の支持能としての可能性をRANKL発現を指標に検討した.すなわち,骨芽細胞にIL-32を作用させ,RT-PCRを用いて経時的にRANKL発現を解析したところ,IL-32は骨芽細胞のRANKL発現を誘導し,破骨細胞形成を誘導する可能性が示唆された.一方でIL-32は他の炎症性サイトカインやプロスタグランジンE2の誘導を引き起すことが示唆されているため,骨芽細胞や破骨細胞前駆細胞に対してもこれら発現が誘導されるかをPCRで検討するためのプラーマーの条件を検討した.以上のことからIL-32は,骨芽細胞のRANKL発現の誘導を介して破骨細胞形成を誘導する可能性が示唆された.
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