研究概要 |
今までの研究で,歯周病原性細菌の一つであるAggregatibacter actinomycetemcomitansの菌体成分であるリポ多糖(LPS)が,歯周組織での炎症発現に関与するマクロファージに対してIL-32の発現を誘導することが明らかとなった.そこで今年度はA.actinomycetemcomitansのLPSが単球系細胞におけるIL-32発現を誘導する機序について検討した.まず,マクロファージとしてヒト単球様細胞(THP-1細胞)をフォルボールエステルで活性化した後にLPSを作用させ,経時的にRNAを抽出し, IL-32の遺伝子発現をRT-PCR法で検討した.また,LPSの濃度依存的にIL-32の発現を誘導するかを検討した.一方,LPSは,マクロファージの膜上に存在するTo11様受容体4(TLR4)を介してプロスタグランジンE2やIL-1β,腫瘍壊死因子などの炎症性サイトカインの産生を誘導することが知られている.そこで,LPSによるIL-32産生にTLR4が関与するかどうかを検討するために,TLR4の下流に存在する核内転写因子の一つであるNF-kBの阻害剤を作用させた後にLPS刺激を行なった.その結果,NF-kB阻害剤の濃度依存的にLPSによるIL-32発現を阻害した.以上のことから,THP-1細胞におけるLPSによるIL-32発現の誘導にNF-kBの活性化が関与する可能性が示唆された.
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