研究概要 |
脊椎動物の感覚器(耳、鼻)の形成に関わるSix遺伝子が、味蕾と舌乳頭形成に関与するかどうか調べている。本年度はSix1とSix4のマウス味蕾と舌の発現を調べた。方法は抗体を用いた免疫組織学、in Situ hybridization、Six1+/-、Six4+/-マウスのGFP蛍光の検出およびLacZ発色による。1)舌:胎生13.5日、舌筋にSix1とSix4の発現がみとめられた。胎生14.5日、茸状乳頭の隆起が出現すると、乳頭の背面上皮に限局してSix1とsix4が発現し、胎生18.5日以後消失した。一方、舌後部の有郭乳頭と葉状乳頭では胎生15.5日に溝が出現すると、溝底上皮にSix1が発現した。出生後発現は減弱した。Six4は溝に発現しなかったが、胎生17.5日、有郭乳頭の背面上皮に味蕾の原基が出現すると、そこに発現した。味蕾を持たない糸状乳頭には発現しなかった。2)味蕾:胎生期の味蕾の原基から生後発達過程および成熟マウスの味蕾にSix1とSix4が発現していた。味蕾細胞はI型、II型、III型に分類されておりそれぞれのマーカーの抗体とSixの抗体を用いた二重染色を行った。Six1,Six4ともに血型細胞には発現していなかった。II型とI型の一部と思われるがSix1とSix4では発現様式に違いがあるようでさらに検討を要する。本研究よりSix1とSix4は味蕾とその機能的プラコードである茸状乳頭、葉状乳頭、有郭乳頭に発現することが明らかとなった。また味蕾細胞のうち求心性シナプス構造をもつIII型ではなく味覚受容体をもつII型、支持細胞といわれるI型細胞の転写因子として働くと推測された。
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