研究概要 |
Six遺伝子の舌乳頭形成における役割を調べるため、胎生期のSix1-,Six4ノックアウトマウスとSix1^<-/->Six4^<-/->ダブルノックアウトマウスを走査型電子顕微鏡、in situ hybridization(ISH)法と免疫組織化学により解析した。Six1^<-/->とSix1^<-/->Six4^<-/->マウスでは味蕾を生じる茸状乳頭、有郭乳頭と葉状乳頭に変異が見られた。糸状乳頭は変化がなかった。胎生(E)13日の舌尖と舌体では両者とも茸状乳頭の形態は明らかでなかったが、E14.5になるとSix1^<-/->とSix1^<-/->Six4^-の茸状乳頭は直径が大きく背も高くなっていた。また配列も乱れており乳頭同士が癒合している像も見られた。茸状乳頭原基のマーカーであるShhとWnt10bの発現をホールマウントISHにより比較すると、E13におけるこれらの分子のスポットはSix1^<-/->マウスで野生型に比べ増加していた。一方、香後部ではE13.5に有郭乳頭の原基上皮の陥入が始まっていたがSix^<-/->では野生型より亢進していた。E14.5以降ではSix1^<-/->の乳頭溝は短く、個体により過剰な浅い溝がみられた。葉状乳頭はE15.5の舌側方に隆起として観察された。Six1^<-/->ではすでに4列の乳頭と溝があらわれていたが、その後の溝の発育は悪かった。またSix4^<-/->は野生型と同様であった。これらの結果よりSix1が欠損すると茸状、有郭、葉状乳頭の発生が亢進することが明らかとなった。溝形成には神経の影響があると思われる。またSix1の欠損によりShhとWnt10bの発現が高まるので、茸状乳頭の形成と分布にはSix1,Shh,Wnt10b相互の連関が必要と思われる。
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