研究概要 |
P.gingivalisは歯肉溝バイオフィルム形成菌の一員として生存する。バイオフィルム形成菌は抗菌薬や生体防御機構に抵抗し、歯周病の治療の大きな障害となっている。バイオフィルム形成菌の抗菌薬等に対する抵抗性は物理的要因に加え、バイオフィルム形成菌の浮遊菌とは異なる遺伝子発現が関与している可能性が考えられたことよりP.gingivalisの浮遊菌とバイオフィルム形成菌の遺伝子発現の差異を検討した。ヘミン、メナジオン、イーストエキストラクト添加Triptic soy brothにてP.gingivalisを96 well plateで2日間嫌気培養し、各wellの上清菌を浮遊菌、プレートに結合した菌をバイフィルム形成菌とした。両菌より総RNAを抽出し、cDNAを作製後、P.gingivalis W83株のゲノム解析データーを元に作製されたアレイ(GeneFrontier社)にてDNAアレイ解析を行った。1,909遺伝子をターゲットとして浮遊菌とバイオフィルム形成菌のDNAアレイ解析を行ったところ、74遺伝子において2倍以上の発現の差異がみられた。バイオフィルム形成菌で遺伝子発現が増加したものはABC transporter,efflux transporter MFP component RDN family,thioredoxin family,Tet R,luxP,sensor histidine kinase等の32遺伝子、減少したものはheat shock protein90,oxyR,outer membrane efflux protein,AcrB/AcrD/AcrF family protein等の42遺伝子であった。細胞壁における物質の取り込みや排出に関与する物質や薬剤排出に関与する物質の遺伝子の増減がみられたことより、これらが間接的または直接的にバイオフィルム形成性や薬剤感受性に関与している可能性が示唆された。
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