研究概要 |
本年度は,昨年度同定したLPS刺激後のB細胞の増殖過程で特異的にリン酸化が起こるチロシンリン酸化基質タンパク質,p25の性状について詳細に検討するとともに,サイトカイン産生との関連性について検討した.その結果 1.抗p25抗体(抗Ran抗体)を用いた二次元ウエスタンブロッティングから,B細胞には無刺激で複数のp25のスポットが観察されること,LPS刺激によりその総量が増加し,且つその最も酸性側のスポットの量が増加することが明らかとなった. 2.C3H/HeNおよびC3H/HeJマウスB細胞に対し増殖活性を示すP.gingivalis LPS,ならびにC3H/HeNマウスB細胞にのみ増殖活性を示すE.coli LPSを用いた検討から,上記のp25のスポットの変化は,LPS刺激後のB細胞の増殖反応と一致することが明らかとなった. 3.LPS刺激後のB細胞内チロシンリン酸化反応阻害剤であるハービマイシン処理を行うと,いずれのマウスB細胞についても増殖反応およびp25のスポットの変動(総量および最も酸性側のスポット量の増加)が完全に抑制されたことから,p25のチロシンリン酸化が増殖反応に関与することが強く示唆された. 4.LPSによるB細胞のサイトカイン産生との関連性について3種類のMAPキナーゼ(ERK1/2,p38,JNK)の阻害剤を用いて検討した結果,P.gingivalis LPS刺激後のp25のスポットの変動はサイトカイン(IL-6,TGF-β)産生と関与することが示唆された. これらの結果より,B細胞内チロシンリン酸化基質タンパク質,p25の総量および最も酸性側のスポット量の増加は,P.gingivalis LPSによるB細胞の増殖反応およびサイトカイン産生に関与していることが強く示唆された.
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