研究概要 |
負荷増大による筋増量は、数年前まで筋細胞数の増加はほとんどなく、ひとつひとつの筋線維の筋タンパク質合成(促進)が筋タンパク質分解(抑制)を上回る結果、ひとつひとつの筋線維の太さが増し、筋組織としての筋重量が増加し、筋機能も向上すると考えられてきた。しかし、このひとつひとつの筋線維の肥大という現象に加え、筋幹細胞の分裂と癒合が促進し、新たな筋線維の出現、既存の筋線維への癒合などが筋肥大に関与するという報告がなされた。筋機能再活性、すなわち筋肥大の機構に関与するメカニズムの一端である骨髄由来SP細胞の筋線維への分化過程を解明するため、いくつかの条件下で骨髄由来のSP細胞と筋芽細胞を共培養して骨髄SP細胞が筋形成する際に特異的に発現するタンパクを同定することを目的とした。試料となる骨髄由来のSP細胞は、9週齢ICRマウスの大腿骨から骨髄細胞を取り出し、Hoechst33342を適量添加しFACS解析により細胞を採取した。この細胞を6ウェルのコンパニオンプレート(BD Biosciences)に細胞を播種した。その上に1μmポアサイズのメンブレンであるセルカルチャーインサートをのせ、その中にマウス筋芽細胞株C2C12を播種し、生着させた。生着後、培養液を無血清培地に替えた。そして骨髄SP細胞が筋形成する際に特異的に発現するタンパクを同定しSP細胞から筋肉細胞への分化の仕組みを検討した。その結果、筋幹細胞が正常に分化発育するためには、成長因子であるIGF-1,HGFなどの発現から始まり、筋特異的転写調節因子によって筋収縮タンパクが順次発現、筋組織を構築、そしてMyostatinおよびDecorinなど関連因子を含んだ筋分化制御因子の発現が必須である事の一端が本研究期間で明らかとなってきた。
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